曽我部恵一、霧を突き破った歌の「結晶」 17:30 LAKE STAGE

 き、霧が……レイクではとんでもないことになっています。ステージ裏の湖からもうもうと立ち昇る霧はまるで冷たい温泉(?)のよう。それが強風に乗って吹きつけ、レイクのフィールドは天然のスモークが焚かれたかのように、ちょっと厳粛なムードが漂っています。そんな中登場したのが曽我部恵一。先月のフジロック・フェスティヴァルではバンドでの参戦となった彼、今回は一転、アコースティック・セットでその歌を聴かせてくれることになりました。
 9月25日に発売になるソロ・デビュー・アルバム『曽我部恵一』からの曲、“ふたり”のアコギ弾き語りで始まった今日のステージ。霧の向こう側からそっと届けられた歌に客席は静まり返り、何やらピンと緊張したオープニングだ。アコースティックのフレンドリーなコール&レスポンス、的な要素は皆無。しかし続くシングル“ギター”、そして“夏の日の呪文”で、ようやくムードが柔らかくなってきた。「曽我部です、どうも。涼しくていいですね」。涼しい……っていうか、真っ白な霧なんです曽我部さん。前が見えないよう。そして“大人になんかならないで”。まろやかな声。ベース&キーボードが参加してのピチカート・ファイヴのカバー、“メッセージ・ソング”、透きとおった声とミニマムな演奏が、霧に溶けて風景と一体化する。今日のライヴが曽我部恵一にとっても、この場に集った私達にとってもメモラブルな体験となるんじゃないか?と思い始めたのはこの時だった。とにかく、全てのシチュエーションが完璧だ。続く“浜辺”は最初のクライマックスだった。発せられた第一声の予想外の鋭さにどきっとする。徐々に昂ぶっていく「夜越えて」のリフレインが、全てがまろやかな濃い霧の中で、唯一の「実体」としてますます研ぎ澄まされていく。続いてはっぴいえんどのカバー、“空色のくれよん”。これはファンには嬉しかったんじゃないだろうか。「ギターのチューニングをしてもいいでしょうか? じゃあその間にMCを(笑)。みなさん、海行きました? 海、いいですね。今度出すソロ・アルバムのジャケットも海で撮影したんですけど。家族と一緒にね。海で泳ぐと生命のエネルギーを感じられますよね。こういう山の中もそうだけど。みなさん、明日からまた自分達の家や職場に戻るんだろうけど、自然の風景を覚えておいて、生活してください」。そんな彼の誠実なメッセージが、するりとみんなの心の中にメモされる。歌の力がもたらした緊張感と、言葉にしなくても感じられる親近感が今日のステージには満ちていた。ラストはサニーディ・サービスの“サマーソルジャー”。再びアコギ一本で奏でられたこの曲は圧巻だった。めぐり来る季節や日々の情感を超えていく詩情。それはポジティヴな表現の結晶だった。(LAKE STAGE 18:20)

ウッドベースもいい感じ 湖から立ち上る霧。幻想的な光景
ああ、美声! 今日は楽しかった!
これからドラゴンアッシュ見に行きま~す
'02.8.8 お待たせしました!HMV DJブースのプログラム発表!