「マーズ・リトミック始めます!」の号令のもと、痙攣的なギター・フレーズと変則的なリズム・ワークが癖になる“GT Bolero”、続いてポップに疾走するロック・ナンバー“BLIND PROBLEM”と、ミニ・アルバム『The blend of a cabanon』からの楽曲でスタートしたライヴ。ここでいきなり磯部が「新曲を3曲やります」と宣言して、客席からはどよめきと歓声が起こる。その新曲はというと、これがいい。ゴリゴリのベース・ラインが推進力となって曲を引っ張るパンク・ナンバー“I swear with all my soul”、軽快なギターのフレーズが爽快な“それを”、そして痛快なまでにドライヴィンなパワー・ポップ・チューン“オーバーレイアース”。どの曲もスコーンと抜けがよくて、肩に力が入っていない。一発で分かるポップさに、オーディエンスの反応もいい。気をよくしたのか、「背中の地図見ます?」と日焼けして皮の向けたあとを見せる磯部。サーフィンやったからだというが、すげえ焼け方だ……。そんなところにも夏を感じつつ、ライヴは終盤。デビュー・アルバム『Range over hill and』からの楽曲を畳み掛けていく。ラスト・ナンバーは“砂上の楼閣”、新曲でもそうだったけど、ギターをかき鳴らしてこういうストレートなロックンロールをやってるときの磯部は、本当に楽しそうだ。夏らしい爽やかさと熱さを兼ね備えたそのグルーヴに、元気をもらった人もたくさんいたのではないか。(小川智宏)