キック・ザ・カン・クルー
「おまえらの太陽になってやるぜ!」
その言葉に偽りなし 17:40 グラス・ステージ 
8/1 20:05 UP

 「キック・ザ・カン・クルー登場!  しかも新曲から!」というアナウンスと共に、いよいよキックの出番に! 2年連続でグラス・ステージ出場となる彼らだが、そのパフォーマンスは「フェス」を「お祭り」へと塗り替える、優れた翻訳機能を装備している。彼らがパフォーマンスすると、「わっしょいわっしょい」という極めて日本的な盛りあがりが生じるのである、実のところ極めて革新的なブレイクビートに合わせて。ビートは限りなくラジカル。しかし、彼らのビートの機能性は、田舎でトラクター運転するおじさんの、そのアクセルを踏む足にも勇気を。そう、彼らの音楽は本当の意味で先鋭的だ。ラジカルで鋭い。だから、貫通するのだ、日本全国へ。
 冒頭のアナウンス通り、MCU、LITTLE、KREVAの順にマイクをリレーして新曲“BREAK3”を披露。ビートが剥き出しになった構造の、極めてシンプルな楽曲を3人のラップとリリックだけで彩っていく。ときおり聞こえる打楽器は一体なんだろうか? どこか非西洋的な響きを宿しているように感じたが。彼らのもつ黒人ヒップホップに対するいい意味での距離感を象徴する1曲といえるかもしれない。
畳みかけるように“RE‐FRESH”“地球ブルース”と「お祭りナンバー」を放出したところで、KREVAに扇動され、MCUへのハッピー・バースデイ・コールが会場から湧き上がる。MCU、今年で30歳。「一生の思い出になりました」という、ナイス・ガイらしいひとことに会場がさらに沸く。昨年の暑い日差しのなかでも、今年の肌寒い小雨のなかでも、彼らのパフォーマンスはいつもあたたかい。
8月リリースのシングル“性コンティニュー”から“ストレス”とつないだ後でKREVAがひとこと。「太陽は見えないけど俺がおまえらの太陽になってやる!」………ぼくが自分の彼女に言ったら間違いなく爆笑されるMCも、もちろん会場全体からウェルカム。中盤ラストの“神興ロッカーズ”まで会場全体と相思相愛の関係を築き上げていく。KREVAが「千手観音みたいだ」と驚嘆するほど、会場全体が一体となって手を叩き、手拍子をしている。凄まじい空間掌握力である。小雨がぱらつくなか針飛びもなく、ひたすら飛躍力のあるトラックを繰りだしていく。オーディエンスにとって滞空時間の長いステージになったと思う。
 とはいえ、彼らの武器はやはり感傷にあり。沸点越えのパーティ・トラック“マルシェ”に続く“sayonara sayonara”“アンバランス”がこの日のハイライトだった。彼らがトラックに使う音色、その切なさがぼくは大好きだ。彼らは“色”で泣かす。この2曲は“キック・ザ・カン・クルー・カラー”と呼べる、極上の切なさを宿している。そこで歌われるのは、大人になる恐怖であり、自分に嫌悪を感じた瞬間の恐怖であり、マッチョなヒップホップとは真逆の世界観を主張している。この広い祝祭空間には似つかわしくないのだろうか。いや、そうは思わない。泣きながら踊ることを許す彼らのヒップホップは本当の解放を与えてくれるものだ。自分の弱さ、自己嫌悪、その解放を。このカタルシスもまたフェスの醍醐味ではないか。
 おのれの無能をなげくような叙情的なチューンを演奏しながら、笑い泣きができる全能のステージを展開したキック・ザ・カン・クルー。お見事。
 そうそう、夜になりかなり肌寒いので風邪をひかないように気をつけてください。そして、音楽の熱を全身で浴びてください。次は“裏打ち界の真打”東京スカパラダイスオーケストラ!!(其田尚也)
DJブースにはレイク・ステージから直行の
POLYSICSハヤシヒロユキが登場!!!

ハングリーフィールドにて。
ちょっと眠い……。

日程――2003年8月1日(金)、2日(土)、3日(日)
時間――開場9:00 開演11:00 終演20:30(各日共予定)*雨天決行(荒天の場合は中止)
会場――茨城県ひたちなか市国営ひたち海浜公園
お問合せ――ROCK IN JAPAN FESTIVAL事務局
0180-993-611(24時間テープ対応、PHS不可)
ロック・イン・ジャパン・フェスティバルのWEBサイトは、PC、携帯どちらもhttp://www.rijfes.co.jp/